関節・骨・筋肉に関する症状で辛いものの一つに、鋭く刺すような「激痛」が挙げられます。
当院において、痛みがなくなる状況まで施術する場合、どうしても当人の努力がある程度必要になってきます。
中にはかなりの時間がかかる場合もあるのですが、当人の不断の努力により1ヶ月という短期間で痛みが解消されたケースもあります。
今回は、アドバイスを受けてから、しっかり対策に取り組んで結果を出した方の体験談をご紹介します。
蔭山様との対話
今回の体験談は、右肩甲骨下縁の痛みを訴え、当院にお越しいただいた蔭山様の例についてです。
施術を担当した当院スタッフの吉野が、対話の中で問題に感じた部分を指摘しています。
また、その際の考察も載せております。
初めて肩甲骨に痛みを感じたのは、2019年5月10日のこと。
最初はそれほど目立った痛みではなかったものが、次第に日常生活に支障をきたすほどの痛みとなり、整形外科を受診されました。
しかし、レントゲンでは「異常なし」の回答。
そこで、筋肉の症状に問題があるのではないかと考え、患部をほぐし続けたり、鎮痛剤を飲み続けたりしていたものの、依然痛みに悩まされる状況が続いていました。
ご主人がインターネットにて当院を見つけてくれたことをきっかけに、はるばるお越しいただいたのは、6月12日のことでした。
初回来院時の対話記録
─ こんにちは。どのような症状にお悩みですか?
蔭山様 はい。5月頃だと思うんですが、刃物の先で突き刺されたような痛みが急に来たんです
それで、どんどん痛みが増してきたので、骨とかをどうにかしてしまったのかなと思って、骨が原因だと動けないじゃないですか、でも動けるから2、3日様子を見ているうちに痛みが増してきて、これは困ったなあと思って、まずは整形外科に行ってお話をしてレントゲンを撮って頂いて骨に異常が無かったので、筋肉に何かあるんじゃないかという診断でした。
─ 薬はもらいましたか?
蔭山様 その時に、シップ薬と痛み止めの薬も頂いたんですけど全然効かなくて。それで3日くらい経って、ひょっとして内科系からきているのかなと思いまして、丁度肺の後ろくらいだから肺の症状かと思って、いつも通っている呼吸器系の先生に伝えたら、やっぱりレントゲンを撮ることになりました。
─ そこでも、目立った原因は分からなかった。
蔭山様 結局、綺麗な状態で肺に異常が無いから筋肉かなってなりまして、整骨院に行ったこともないので何処に行っていいのか分からなくって、他のお店に飛び込みました。そこでは、血流がスムーズに流れていないということをおっしゃっていて、体操のやり方を教えてもらって、取りあえず、3回くらい通わせてもらいました。
─ それでも改善しない中で、当院をお選びいただいたんですね。
蔭山様 痛みは取れない、言っていることが正しいかどうか分からないけど、しばらくは先生の言うとおりにしていました。そんな時、主人が私の悩んでいる症状に似ている症状をネットで見つけてくれて、3・4ページくらいのモノをもらって、それが健寿の森のページだったんです。
─ 普段、何か肩を使うようなスポーツはされていますか?
蔭山様 いえ全然、運動自体嫌いな方です。長年座り仕事・長距離旅行のバスガイドをやっていたので、あんまり歩くこともしていなかったんです。でも、このまま痛いのは嫌ですし、海外旅行にも行けるようになりたいので、何とかしたいと思っています。
─ 分かりました。それでは、身体を診てみますね。
<考察> 検査の結果、右足の墜下歩行が目立ち、腕もうまく振れていない。 |
─ 今回は、機械で言えば錆びついた部分、動きにくくなっている関節をうまく動かすために、潤滑機能を高める施術を行いました。先ほどお伝えした通り、普段の生活から歩くことを意識して、痛みが生まれたら氷のうで患部を冷やすことをやってみてください。
蔭山様 ありがとうございます。何だか、歩くのも呼吸するのも楽になったような気がします。このままの状態が続いたらどうしようかと思いました。これからもよろしくお願いします。
2回目(6月15日)
─ こんにちは。その後の調子はいかがですか。
蔭山様 おかげさまで、痛みが起こったときにどうすればよいのか分かりました。きっと、本気で治したいと思ったら1~2年は覚悟しなきゃいけないんでしょうけど、何十年もかけておかしくなったものですから、やっぱり治すときも何十年とかかるんですよね……。
─ おそらく、まだ歩行時の痛みは感じられると思います。ただ、次第に激痛はなくなっていくと思います。鋭く刺すような痛みがなくなれば、呼吸も楽になりますから。
蔭山様 そうですね。まだイメージがわかないんですが……。
<考察> おそらく、完治するという最終的なビジョンが、蔭山様の頭の中に浮かんでいない。 また、積極的に改善を身体で感じてもらうため、エクササイズもより細かく指導していく。 |
─ これから、いくつか新しいことをお教えします。以前、潤滑が不足することで問題が起こるお話をしたと思いますが、肩回りの痛みというのは、必ずしも肩だけに原因があるとは限らないのです。背骨を正しく動かしたり、首回りの負担を減らしたりすることで、身体のバランスを整えていきます。普段の歩行に加えて、これからお教えすることを試してみてください。
蔭山様 ありがとうございます。続けてみます。
3回目(6月17日)
─ こんにちは。歩けていますか?
蔭山様 何とか歩いています。腕の振り方を意識して、30分は歩くようにしています。あと、教えてもらった体操もやっています。あんまり痛いところとは関係ないような気がしていましたけど、やってみると何だか違う気がします。
─ 痛みが消えてくると、身体がどうつながっているかが体感できると思います。実は、身体のバランスが整うと、症状が改善される例は少なくないんですよ。
蔭山様 そうですか。やっぱり、年相応だからと思ってあきらめていた部分は大きかったんですが、きちんと診てもらって安心できました。ありがとうございます。痛かったら冷やすことも忘れないようにしています。
<考察> 努力しているな、と感じた。 歩行は安定してきたが、関節の錆びはまだ残っている部分があるため、引っ掛かりを外すための施術を行う。 |
─ 全体的に、症状は改善されています。ただ、一部身体の錆びが残っているところがあったので、そちらを取り除きました。身体は良くなってきていますよ。これからも頑張りましょう。
蔭山様 はい。よろしくお願いします。
4~5回目(6月20日・24日)
─ こんにちは。痛みの方はどうですか?
蔭山様 はい。まだ痛みが完全に取れたわけではないのですが、あのズキンとくる強い痛みはありません。一時は寄りかかることも怖くてできなかったのに、本当にビックリです。
─ まだ、体重をかけることには不安があると思います。今回は、その点を考慮した施術を行いますね。人間の身体は動かし続けていないと、どんどん老化が進んでいきますから、これからも歩き続けるようにしてください。
蔭山様 はい。運動も続けていきます。よろしくお願いします。
6回目(6月27日)
─ こんにちは。あれからどうですか?
蔭山様 だんだん1日を通して痛むことがなくなってきました!だからかもしれませんが、立ったり座ったりするときに、最初の段階で力加減が分からず、痛みを感じることがあります。
<考察> 施術終了は近いところにある。 |
─ 一日を通して痛まないことは、とても良い傾向です。ただ、年齢に応じた身体の動かし方を覚えて工夫しないと、ちょっとしたことで痛みが出る場合があります。できるだけゆっくりと、身体のパーツの動きを確認しながら立ったり・座ったり・移動したりするよう心掛けてください。
蔭山様 分かりました。意識してみます。本当にありがとうございます。
7回目(7月4日)
─ こんにちは!元気そうですね。
蔭山様 いやぁ、2ケ月ぶりくらいですかね。ショッピングに行ってきたんですよ。5時間くらい歩き回ったんですけど、全然疲れなかったのでびっくりしています。先生に教わった通り、歩くときや座り方を意識しています。もちろん、冷却と体操も忘れずに行っています。
─ 何よりです。このままいけば、施術の必要はないかもしれませんね。
蔭山様 ありがとうございます。実は最近、スーパーの買い物にも歩いて出かけるようになりました。外出先で痛みが出ることに不安を感じてはいるのですが、そんな時も帰って冷やせばいいだけなので、考え方が楽になりました。
─ 痛みが出ないようにするのではなく、痛みが出たときにどう対処するのかを知っておくと、意外と勇気が出るものなんです。もう少し時間がたてば、もっと楽になるはずですから、最後まで一緒に頑張りましょう。
蔭山様 本当にありがとうございます。息をするのも辛かった頃が嘘のようです。(健寿の森に)通うようになってから、不安がどんどん消えていきました。
最終日(7月16日)
─ こんにちは。まだ痛みはありますか?
蔭山様 もうほとんど感じません。ショッピングに出かけたときから感じましたが、かなり体調がいいんです!
─ 良かったですね!これからも、歩き方・年齢を考えた身体の動かし方を意識して生活を続けていれば、きちんと身体は応えてくれますよ!
おわりに
今回のケースでは、何らかの動作によって筋肉に大きなダメージがあったわけではなく、骨盤が不安定になったところでそれをかばうような歩き方をした結果、筋肉への負担が過剰になったものと考えられます。
また、厳密にどの箇所が悪いと特定しきれる症状ではなかったことから、レントゲン・医師の診断では手に負えなかったものと推察されます。
身体は一つの部位に何かを依存することで、全身のバランスが崩れます。
今回の例で言えば、仙腸関節の潤滑、歩行時の軸を安定させることにより、身体全体の負担軽減につながりました。
よって、肩甲骨そのものに爆弾を抱えていたわけではなかったのです。
蔭山様も、ご本人が身体のバランスに問題があったことを自覚するようになり、生活改善の意識の高さがあったことで、短期間での症状改善へつながりました。
身体のどこかに痛み・不調を感じたときは、特定の部位だけでなく、その痛みの根本的な原因を作っているのはどこなのかを、全身くまなく調べることが大切だと分かった好例と言えるでしょう。