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日本でもお灸は広く認知されているものの、実際にやったことがない人にとっては、まるで「何かの罰」のように想像してしまうかもしれません。
実際のところ、お灸と聞いてどのようなツボに施術が行われるのかは、実際に施術を体験してみないと頭に思い浮かべにくい部分は確かにあります。
今回はその点に着目し、坐骨神経痛をお灸で改善することはできるのか・できるとしたらどこが効果的なのかなど、坐骨神経痛とお灸の関係について触れていきたいと思います。
劇的な効果こそ期待できないものの、現代では色々な種類のお灸があることから、自分に合った商品を選びやすいかもしれません。
そもそも、自分でお灸はできるのか?
まず、お灸自体が専門的な技術であるように考えている人は多いと思います。
しかし、実際のところ、そもそも自分で必要な箇所にお灸することは可能なのでしょうか。
結論から言えば、セルフケアとしてお灸を取り入れている人は一定数存在しています。
しかし、自分一人でツボに刺激を与えるには難しい箇所もあり、限界はあると言えるかもしれません。
一般的なお灸のイメージ
お灸が何となく専門的なイメージのままで止まっているのは、日本でどちらかというと悪い意味として広まっている「お灸をすえる」という言葉が関係しています。
この言葉は、悪いことをした子供を叱る・仕事でミスをした部下を叱るなど、相手の非に対して強い怒りを示すような意味で用いられます。
現代においてそのような意味で用いられているのは、昔のお灸があまり気軽に行えるものでなかったことが理由として挙げられます。
江戸時代など、かつて民間療法として行われていたお灸は「打膿灸(だのうきゅう)」と呼ばれ、強い熱刺激を与えて故意にやけどを作った後、それを化膿させて膿を出すという荒療治だったのです。
やけどの痕ができるほど壮絶なものでしたが、その分免疫機能は活性化されたと言われています。
これに対し、現代で用いられているのは「無痕灸(むこんきゅう)」で、やけどの痕を残すことのない程度に熱さが調整された、温熱刺激のお灸です。
強烈な効果を期待するというよりは、温かさによるリラックス効果を狙ったものであり、現代で流通する商品にもそのような傾向が見られます。
実際のところ、流通しているお灸はそれほど危ないものではなく、素材となるモグサは原料にヨモギが使われています。
ヨモギには数多くの薬効があり、香り成分にはリラックス効果もあります。
また、投薬治療に比べて副作用が少ないため、ヨモギ茶を愛飲している人も多いようです。
自分でお灸を行う場合、どのような種類があるのか
セルフケアとしてお灸を行う場合は、利用者がやけどをしないよう、商品には細かい気配りがなされています。
具体的には、皮膚に触れる部分には和紙などが貼られ、熱を通しつつ熱くならないようにくぼみが作られているのです。
また、台座・もぐさ部分に通気口が設置され、よもぎ成分を含んでいる温熱がツボを温める構造となっています。
基本的な使い方としては、台座部分の裏にある薄紙をはがした後、もぐさが含まれる突起部分に火がついたら、それをツボにあてがう方法が一般的です。
その種類も豊富で、使う人の肌に合わせて、部位別に使うお灸を分けることもできます。
敏感肌・皮膚が弱いと感じる人は、熱感の少ないソフトタイプを選ぶとよいでしょう。
やさしい香りのするものなど、多くの製造会社で多種多様なラインナップを用意しているため、こちらは入門編と言えるかもしれません。
熱感に慣れてきたら、皮膚の厚い部分に効果があるものを選びましょう。
ショウガ・ニンニクなどの成分を配合するものもありますから、より短期間で効果を期待する人にはこちらがよいのかもしれません。
気軽に取り組みやすいのは手足
現代の市販されているお灸は、ツボに貼り付ける形をとっているため、自然と自分で貼れる場所が限られています。
よって、何らかの効果を感じるようになったら、色々な部位に貼りつけて効果を試すのが有効と言えます。
お灸の考え方は東洋医学が発症で、特に「未病」という概念に即して用いられる技術です。
発病には至らないまでも何らかの軽い症状が見受けられ、それを速やかに解消して病気を予防するという考え方から、一見坐骨神経痛とは関係のない部位をケアするケースもあります。
この記事の終わりに、自分で取り組むのに比較的簡単な箇所を後述しますので、できそうであれば一度チャレンジしてみるのもよいでしょう。
自分でやるには色々と面倒がある
正しい場所にお灸をすえることが苦にならない技術を持つ人を除いて、お灸を自分でやる場合、思いのほか面倒に感じられるかもしれません。
以下に、自分でやる場合に注意したい点をご紹介します。
ツボの場所、分かりますか?
ツボの効果は分かっていても、肝心のツボの場所をきちんと押さえていないと、せっかくのお灸の効果が期待できません。
また、仮に場所が分かっていたとしても、背中にあるツボなどに正確にお灸をすえるのは、一人ではなかなか難しいはずです。
使い方を間違えればやけどのおそれもあるため、素人判断は危険です。
火を扱うことを意識して、何かあればすぐに火を消せる体制を整えた上でお灸を用いましょう。
推奨回数も決まっている
回数・個数の面でも、お灸にはいくつかの制限があります。
一日にお灸を行えるのは1回まで、ツボの数は1~3個というのが、身体に負担をかけない数となっています。
また、長時間熱を感じ、熱さを我慢するのはかえって逆効果です。
短時間に感じられたとしても、気持ちいいと感じるレベルで控えておくことが大切です。
何だか肌がピリピリする、という感覚が生まれている場合、それはすでにやり過ぎの領域に達しているかもしれません。
また、体調が悪いときにも無理をせず、飲酒時・発熱時・高血圧といった症状のときは避けるようにしましょう。
火を使わないお灸もある
現代のお灸の中には、火を使わずに温感を感じられるものもあります。
基本的な構造は、もぐさの性質を利用したものと変わりないのですが、構造としては「貼るカイロ」的な機能を備えています。
メリットとしては、衣類を着用したまま使え、旅行にも持ち運びやすい点が挙げられます。
また、最長3時間まで熱が持つものもありますが、それだけ長い時間熱するのも逆効果になるという指摘もあります。
モグサなどを直接熱して得られるアロマ効果もないことから、リラックス効果を主として考えている人には、あまり魅力的ではないかもしれません。
それでもお灸を自分でやってみたい人のために
ここまでの説明で分かると思いますが、お灸はセルフケアの中でも中級者以上におすすめできる方法です。
プロの施術も含めツボを刺激する習慣があり、何らかの形で体調改善につながった経験がなければ、かえって逆効果になるおそれもあります。
しかし、それでもお灸を自分でやってみたいと考える人向けに、効果が期待できるツボをいくつかご紹介します。
委中(イチュウ)は効果的とされるが、自力でお灸は難しい位置にある
坐骨神経痛・腰痛を和らげるツボとして知られているのが「委中(イチュウ)」です。
膝の裏にあるシワの中央にあるツボで、腰に何らかの不具合を抱えている人であれば、押されると少し痛いと感じるかもしれません。
お灸で熱感を与えるのであれば、火を使わないタイプを使って刺激することになるでしょう。
また、ツボの位置の都合上、足を動かすとせっかく貼り付けたお灸がはがれてしまうおそれもありますから、十分注意が必要です。
初めてなら万能ツボの「合谷(ゴウコク)」を選ぼう
お灸・ツボの刺激に対して免疫がなく、両方とも初めてという場合は、多くの症状に効果が期待できる「合谷(ゴウコク)」を選ぶのもよい方法です。
親指と人差し指の間の付け根で、人差し指に近いところに位置します。
なぜこのツボがよいのかというと、風邪のひきはじめ・頭痛や歯の痛み・目の症状など、かなり多くの症状に効果があるとされているからです。
ストレスからくる症状もカバーしてくれるため、ツボ初心者は一度試してみることをおすすめします。
築賓(ちくひん)・フ陽(ふよう)も取りやすい
その他、足回りで取りやすいツボとして、築賓(ちくひん)やフ陽(ふよう)が挙げられます。
同じ足のツボでもそれぞれで特徴が異なり、本来の用途も異なります。
まず「築賓(ちくひん)」については、本来は腰から来る神経の緊張をほぐす目的があり、下半身全体の血流改善が期待できるツボになります。
内くるぶし・いちばん高いところに小指を置いたとき、指幅4本+3本ほど上がった場所にあります。
足の血流改善が全身の血流改善に発展し、間接的に坐骨神経痛の緩和につながります。
坐骨神経痛に限らず、足から腰への痛みを緩和する目的で用いられるツボの一つです。
続いて「フ陽(ふよう)」ですが、こちらは外くるぶし・一番高いところに小指を置いたとき、指幅4本をそろえて人差し指があたったところです。
ちょうどアキレス腱の前にあるツボという理解で間違いないでしょう。
こちらも坐骨神経痛に効果があるとされ、肩こりなどにも有効です。
注意点としては、このツボを押したときに強い痛みを感じるようであれば、病状は悪化傾向にあるため、セルフケアよりもプロの施術を受けた方がよいでしょう。
おわりに
当院は整体院ですが、施術としてお灸を行うこともあります。
鍼などもそうですが、主に急性の症状に用い、なるべく早く症状を改善したいというケースで用います。
ただ、症状の短期解消を目的として鍼灸を使うというよりは、身体を総合的に診た結果、早期に改善すべき箇所がある場合に限定されます。
つまり、お灸でだましだまし身体を回復させていくというのは、根本的解決にはつながらないという立場です。
自分の力できちんと身体を動かせるようにするからこそ、整体の存在意義があります。
正しい身体の使い方・歩き方ができれば、お灸を積極的に必要としないというのが、当院のスタンスでもあります。
もし、痛みが悪化していてお灸を使うことを考えているなら、その前に早めに専門家の判断を仰ぐことをおすすめします。
何事も、最初に正しい知識・解決策を学ぶことが大切です。