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肥満は日本のみならず、世界的な健康問題として認知されています。
しかし、変形性膝関節症との直接的な関連性はないものとして捉えられています。
※(当院もそのスタンスです。)
とはいえ、実際のところ太っていることが理由で運動しないというケースも少なからず存在していることから、少なくとも症状を悪化させる一要因としては考えられます。
今回は、変形性膝関節症が肥満によって引き起こされる可能性について考察してみました。
まずは、変形性膝関節症になる原因のおさらいから
当院では、肥満と変形性膝関節症との直接的な関連性はないというスタンスです。
もしそうならば、相撲取りの方は全員が変形性膝関節症になっていてもおかしくないでしょう。
自らの体重によって変形性膝関節症を患っている方が、あれだけ土俵でアグレッシブに動けるはずがありません。
ただ、一般的には一因としてとらえられているのは間違いありませんから、以下に主だった理由をご紹介します。
肥満
今回取り扱うテーマの一つである肥満が、変形性膝関節症に悪い影響を与えるとしたら、どのような理由が考えられるでしょうか。
まず、肥満になることで全体的に動きがにぶくなります。
そして、あまり積極的に動こうと考えません。
すると、いざ運動しようという段階になり膝が次第にこわばってきて、膝に余計な力がかかります。
膝は意外と力持ちで、普段から体重の2~3倍の重さがかかっていると言われています。
これが階段などを上ることになると、5倍近くの力になることもあります。
体重が増えた分負担もかかるので、結果的にこわばった膝が体重を支え切れず、骨が変形してしまう可能性は十分あるでしょう。
そして、肥満という間接的要因に加えて、以下に挙げる他の要因が結びつき、大事に至ってしまうこともあるのです。
運動不足
肥満の副次的な悪影響と言えるかもしれません。
身体が重くなることで、運動することがおっくうになり、次第に運動不足気味になっていくのです。
脚の筋力が衰えることは、膝の負担を強めることにもつながりますから、長い目で見ると膝を悪くする原因になっていきます。
ただ、太っている太っていないにかかわらず、運動不足で良いことはありませんから、気軽に身体を動かす習慣は身に付けておいた方が、身体は楽になるはずです。
O脚
日本人にとってはポピュラーな症状の一つです。
正座したり小さいスペースで体育座りなどをする習慣が多い日本人にとっては、あまり気にしない症状でもあります。
しかし、このような傾向は股関節の動きから柔軟性をなくしてしまうため、あまりメリットのある傾向とは言えません。
当然、膝にも少なからず影響を及ぼしています。
標準体重であればまだしも、肥満体となれば無視できない場合は十分あります。
また、O脚を考える場合は、発生が変形性膝関節症「以前」なのか「以後」なのかによってもアプローチが変わってきます。
身体全体の状態をしっかり確認しなければ、本質的な解決にはつながらないと言えるでしょう。
両親からの遺伝
骨や関節にかかわらず、両親の良いところは似ずに悪いところが似るというのはよく言われることです。
主に知能面でささやかれることが多いですが、もちろん身体にも影響しています。
両親のどちらか、もしくは両方が変形性膝関節症に悩まされているのであれば、自分も将来を考えてエクササイズを始めておいた方が賢明かもしれません。
仕事の内容
膝に負担がかかりやすい職業というものは、一定数存在しています。
一例を挙げると、引っ越し屋さんのように普段から重いものを持つことが多い仕事や、長時間膝を動かしつつ身体全体は動かさないドライバーなどが該当します。
身体全体で見て、一部にだけ一定の負荷がかかった状態は、決して健康に良いとは言えません。
こういった職業の方は腰痛などにも悩まされるため、定期的なケアや運動が必要になります。
自分自身の将来のためにも、膝の負担を考えて仕事に臨むことが大切です。
スポーツでハードに動く
よくスポーツによって膝を壊すという話を聞きますが、スポーツの種類によってどの部位にダメージを受けるのかが違います。
ざっくり言うと、膝に長い時間負担がかかる運動を継続して行うことにより、何らかの不具合が生まれる可能性があります。
この場合、先に症状が発生するのは筋肉で、疲れからダメージが蓄積することで痛みが発生しているケースが多いです。
瞬発力を必要とする運動や、屈伸運動の多いスポーツについては、特に注意が必要です。
変形性膝関節症になってしまったら何をすべきなのか
変形性膝関節症の原因をおさらいしたところで、実際に症状が発生してからどのように対処すべきなのか、肥満という点にも触れつつお伝えしましょう。
整形外科における対応に加え、日常動作ではどのようなことに気を付ければよいのかも、合わせてご紹介します。
初期段階で整形外科にできることは限られている
整形外科に行ってできることと言っても、症状が出たばかりの頃は限られています。
画像診断のあと、問題が無ければ湿布や痛み止めの処方がある程度でしょう。
もちろん、症状に応じて注射や手術といった選択肢も生まれてきますが、基本的には対症療法です。
そのため、整形外科でどうにもならず、当院に限らず整体院の門を叩く方は多いのです。
医療関係者がカイロプラクティックに通っているという話も聞きます。
症状を悪化させないためにできること
初期段階で適切な対応を行うことにより、予後が良好になるケースは珍しくありません。
とはいえ、日常生活においては今までの習慣を一部変えていく必要がある場合もあります。
例えば、正座や和式トイレといった、膝を曲げる習慣を極力減らしていく努力を怠らないことです。
膝にかかる負担を減らすことで、回復を促す必要があります。
また、冬場は特に言えることですが、膝を冷やして痛みが発生するのであれば、膝のこわばりを防ぐため、冷やさないようケアすることも大切です。
肥満という一面から痛みを解消するなら、運動も積極的に行おう
体重が多いことで膝に負担がかかるという点から考えると、長期的に見て運動や減量の習慣は大切だと言えます。
年齢が若いうちは代謝も良く、暴飲暴食をしても運動すれば痩せやすいですが、年齢を重ねるごとに基礎代謝は落ちていく傾向にあります。
そのため、日常的な生活習慣を改め減量を図ることは、身体全体にとっても膝にとってもプラスになります。
当院でも、体重増と膝痛との因果関係がはっきりすれば、減量を促すケースはあります。
その場合、宿題として毎日の歩行を促します。
もちろん、一般的に言われている通り、暴飲暴食を避けつつ栄養バランスの良い食事を摂ることで、身体に必要な栄養だけを取り込むことも心がけなければなりません。
特に、骨を作るカルシウムとタンパク質・ビタミンDも不足しないように献立を組み立てたいところです。
必要な分だけ食べ、自分にできる限りの運動を行うことで、筋肉を強化していけば自然と痩せていくはずです。
膝をケアするという観点だけでなく、痩せることで多くの実りを得られますから、少しずつでよいので毎日運動することを心がけましょう。
当院の方針と対応について
ここまで、一般的に考えられる変形性膝関節症の原因と、肥満と変形性膝関節症との関連性について駆け足でお伝えしてきました。
ここからは、実際に当院にいらした方で、少なからず肥満が関係している場合の対応についてご紹介します。
まずは「歩くこと」が何よりも大事
肥満を解消するためには、食事量をコントロールすることが大切ですが、それと同時に運動も行う必要があります。
変形性膝関節症の一因として運動不足が挙げられるのは、関節の働きを支える土台となる筋肉の衰えが理由だからです。
ただ、逆転の発想になりますが、運動がどのみち変形性膝関節症の症状改善に必要ならば、ある意味一石二鳥になります。
膝を正しく動かす運動を覚えつつ、しっかり歩く習慣をつけることで、膝をケアしながら体重を減らすことに取り組めます。
当院のプログラムの一つとして、人間の本来の歩き方である「正常歩行」をマスターしてもらうというものがあります。
それくらい、歩くという行為は人間にとって重要なのです。
膝も「使いっぱなし」はダメ
歩くことは確かに大切ですが、だからといって何もケアせずに一日を終えるのはいけません。
症状がある段階で運動することは、少なからず膝に炎症する機会を与えてしまいます。
そのため、しっかりアイシングを行って患部の熱を取り去る必要があります。
骨の大部分はタンパク質で構成されていますし、筋肉もタンパク質により成長しています。
つまり、タンパク質をどうケアするのかが、巡り巡って変形性膝関節症の改善にもつながると言えます。
タンパク質は熱により変化する傾向があるため、そのままにしておくことで本来の形状から大きく形が崩れてしまうことがあります。
それがひどくなると、軟骨のすり減りだけでなく筋肉と関節との間にひずみが生じ、炎症の温床になってしまうのです。
炎症を冷まして熱を取り除けば、タンパク質の変性を最小限に食い止められます。
こちらも方法を伝授しますので、患者さんにはしっかり取り組んでもらいます。
運動方法は体力に合ったものを
肥満の方の場合、通常の人に比べて体重が重い分、過度なエクササイズは長続きしません。
脂肪を重りと考えると、標準体重より20kg太っている人は、その分の重りを背負って運動しているのと同じことです。
そのため、まずは毎日動くことを習慣付ける方がはるかに効率的です。
聞いたことがある方もいるかもしれませんが、身体は3ヶ月スパンで変化していくことから、筋トレもダイエットも3ヶ月が一つの目安になります。
言い換えれば、その期間中に挫折してしまう人がとても多いのです。
運動を長く続けていれば、次第に筋肉が育ってきて、消費カロリーにも変化が生じてきます。
また、身体が負荷に慣れ始めるので、膝の症状が改善されるケースも少なくありません。
まずは何でも身体に良いことを「習慣化」するというスタンスが大切です。
おわりに
膝への負担という点から考えれば、変形性膝関節症の原因として、必ずしも肥満ばかりが問題になっているわけではありません。
しかし、肥満はどちらかというと現代社会では敬遠されがちです。
順番としては一般的ではないかもしれませんが、変形性膝関節症になったことをきっかけに肥満を解消するというのも、一つのアプローチとしては十分考えられることなのかもしれませんね。