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靴の中敷き(インソール)ですが、使ったことがある人は少なくないと思います。
一昔前は、ビジネスパーソンが主に消臭目的で使うというイメージが強かったものの、現代では足に関する不調を改善するために使われているケースも多いようです。
中でも、坐骨神経痛を緩和する目的で使っている人・坐骨神経痛や腰痛対策としての中敷きの使い方について、専用のインソールを製作・販売しているメーカー・靴店が目立つようになり、靴自体を買い替えるよりも効果的だと考え、中敷きを愛用している人が見られます。
中には、自分に合ったものを自作しているというユーザーもいるようですが、果たしてこれは根本的解決に結びつく動きなのでしょうか。
今回は、坐骨神経痛・腰痛対策に用いられている中敷き・インソールの使い方・自作について触れていきたいと思います。
中敷き(インソール)を使うユーザーのニーズ
まずは、中敷きを実際に使っているユーザーのニーズについて考えてみましょう。
TPOを意識する形で複数枚を使い分けるというよりは、どんな靴にでも・どんな場面にでも合うものを1セット選びたいという意向が強いようです。
どういう中敷き(インソール)が求められているのか
中敷きを靴の中に入れるシーンは様々です。
ビジネスであれば、男性はローファー・女性はハイヒールやパンプスを履きます。
靴独特の堅苦しさ・クッションのなさで、腰痛・坐骨神経痛の痛みが強まることから、それを軽減する目的で中敷きを入れるのであれば、やはりビジネス向けの中敷きを選びたいところです。
ただ、靴自体に特殊な加工をするわけではないので扱いやすく、洗ったりカジュアルな靴に入れ替えたりする際も、サイズがフィットしていればスムーズに行えます。
また、どのような状況でも足痛に悩まされている場合は、アーチサポーターという素足に装着するデザインのものもあります。
靴が合わないことは分かっているが、ファッションとは両立させたい
TPOを考えたとき、どうしても合う靴・合わない靴というものは存在するのですが、ファッションに合わせるために、足に合わない靴を履きこなさなければならない場面も存在します。
足を悪くする典型的な靴がハイヒールで、足先が細く重心が前にかかるので、足を痛める原因となります。
ローファーや学校の上履きなども、足を支えるには向いていない構造のため、フォーマルな場所で履く靴は足を悪くしやすい傾向があるとも言えます。
よって、足を重視するなら足に合う靴を選ばなければならないし、仕事を重視するなら仕事に合致する靴を選ばなければならないのです。
しかし、モノを選べば足にフィットする靴を選ぶことは可能です。
参考までに、足に負担のない靴の選び方をご紹介します。
①靴に中敷きが入っていて、それが取り出せること ②つま先に空間がある(足指が動かせる)こと ③かかとを支えられる強度・幅があること ④指の部分が柔らかく、足指を自由に曲げられること ⑤靴ひも・テープなどで足を固定し、ぶらぶらさせないこと |
これらの条件を満たした靴であれば、ビジネス・プライベート問わず、足をケアしながら履き続けられるでしょう。
靴だけでは痛みがおさまらない場合に、中敷き(インソール)を選ぼうと試みる
自分にとって履き心地のよい靴を選べれば、痛みや足底の疲労感などは、ある程度緩和できるかもしれません。
しかし、靴だけではどうにも痛みが改善しない場合は、いよいよ中敷きを選ぶか、坐骨神経痛対策用の靴をオーダーメイドすることも考えるようになるでしょう。
中には、自力で即席のインソールを作ってしまい、症状に合わせて微調整するという方法もあります。
ただ、難しいところなのは、足などの痛みが坐骨神経痛だと思っていたら、実は足底筋膜炎という別の病状だったというケースもあるため、やはり素人仕込みの判断は危険かもしれません。
まずはこれが基本!中敷き(インソール)の選び方・使い方・自作方法
坐骨神経痛を改善するのに中敷き(インソール)を選ぶ場合、選び方・使い方・自作する方法など、決めなければならないことがいくつかあります。
どの箇所に痛み・不具合を感じるかによって、選択肢が変わってくるため、自分の身体とよく相談して決めましょう。
どちらの足に、どのような問題があるのかを知る
中敷きを選ぶ場合、そもそもどちらの足に、どのような問題が発生しているのかを理解しておきましょう。
ただ何となく足腰が痛いから、それを緩和するクッション性の高いものを選ぼうとしても、あまり効果がない可能性があるからです。
つま先を開いてみて、開きが大きい足はどちらか。
立っている時、肩がどちらに傾いているか。
片足立ちでヒザを曲げてみたとき、バランスが崩れやすい足はどちらか。
箇所をチェックした後は、改善したい症状を考えます。
足腰がゆがんでいるのか。
全体的に猫背になっているのか。
痛みに対して筋肉が緊張しているのか。
これらを把握した後、最終的に靴に入れ込む中敷きを選びます。
原則として、足全体をケアする中敷き(インソール)を装着する
中敷きの使い方は、もともと靴に入っていた中敷きを取り外し、新たに必要な機能を備えた中敷きを入れ替えるだけです。
ただし、坐骨神経痛の症状緩和に用いるためには、足全体をケアする「ロングタイプ」を選ぶのが定石です。
また、痛みを緩和するのは共通でも、仕事内容に応じて中敷きが変わるため、自分が置かれている環境に即したものを選びましょう。
長時間の歩行に即したモデルなのか、それとも立ち仕事に向いているモデルなのか、商品にも特徴がありますから、それぞれのニーズで試してみましょう。
あるいは、どのような足にもフィットする、セミオーダーメイドの中敷きを使う方法もあります。
電子レンジで温めた後、一定時間足を置くだけで足の形に沿ったインソールができあがる仕組みになっているものが多く、普段通り靴を選んでもフィットしてくれます。
自作する場合に気を付けたいこと
どうしても市販のものでは自分に合ったケアができないと考える人の中には、専門家の指導の下、中敷き自体を自作してしまう人もいるようです。
医師などが作り方を指導している例もあり、軍手などを使って足のアーチに合わせて微調整できるというメリットがあります。
実は、中敷き選びで重要になるのが足のアーチで、大きく分けて3種類あります。
それぞれに問題があると、何らかの悪影響を及ぼすため、自作する場合はピンポイントで症状を伝え、作り方を指導してもらわなければなりません。
以下に、アーチの種類・問題が起こった時の症状について、簡単に説明しておきます。
▲横アーチ
「親指から小指までをつないだ指の付け根」のことを、横アーチと言います。
こちらに何らかの問題があると、外反母趾などの症状につながりやすくなります。
日本人の多くは、その足の形状が外反母趾になりやすいため、靴・中敷き選びで気を付けたいアーチです。
▲内側縦アーチ
「親指とかかとをつないだ指の付け根」のことを、内側縦アーチと言います。
俗に言う「土踏まず」のことです。
こちらに異常が生じている場合で多いのが偏平足で、クッション機能・ポンプ機能がうまく働かなくなってしまい、慢性的に疲れやすく、むくみやすい状態になります。
▲外側縦アーチ
最後に、坐骨神経痛において特に気を付けたいアーチについてです。
「小指からかかとをつないだ指の付け根」を外側アーチと言い、これが崩れてしまうと、ひざや腰に負担がかかります。
坐骨神経痛の緩和を目的とするのであれば、必然的にこちらのアーチをケアする必要性に迫られます。
ただ、この箇所だけに問題があって痛みが発生するのはまれで、他にも複合的に原因があるものと考えておきましょう。
中敷き(インソール)が坐骨神経痛を緩和するメカニズムについて
専門家が足のアーチにこだわることから分かるように、中敷きが目標とするところの一つは、つまるところ正しいアーチを作ることです。
しかし、そのためには自分の足がどのような形状なのか、アーチが足のどういった機能を生み出しているかなどを知っておいた方がよいでしょう。
その上で、中敷きはあくまでも補助であり、根本的解決を中敷きだけで行うのは難しい話であると認識することも大切です。
足のタイプを理解する
中敷きだけでなく、靴選びにも関係してくる話ですが、足のタイプに応じて中敷きの選び方も変わってきます。
切り取って形を構成するタイプの中敷きなら、形状に合った切り方をしなければ、十分に足をケアできないおそれがあります。
▲エジプト型
つま先を見たときに、親指が一番長い足の形です。
日本人の70%ほどがこのタイプで、国内での靴選びには困らないタイプです。
構造上、外反母趾になりやすい形状をしています。
よって、しっかり足と靴がフィットして、親指を変形させないようにサポートしてくれる中敷きを選びたいところです。
▲ギリシャ型
つま先を見たときに、人差し指が一番長い足の形です。
エジプト型に次いで多いタイプで、足のトラブルは比較的少ない形状と言えるかもしれません。
ただ、人差し指が先に出ている分、人差し指に負担がかかりやすい傾向があり、ハンマートゥを起こしやすい特徴があります。
中敷きを構築する場合は、靴を履いた時、人差し指部分に適度な隙間ができるようにしましょう。
▲スクエア型
つま先を見たときに、指の長さの差がない形です。
日本人全体で数が少なく、武術などを行っている人も、このタイプに該当しやすいと言われています。
先端が平らになった靴を履き、中敷きもそれに合わせます。
この場合、どちらかというと靴選びがネックになるかもしれません。
アーチが持つ機能を回復する
中敷きに求められる作用は、足本来のアーチを取り戻すことでした。
アーチには、一歩を踏み出す原動力となるバネの作用、足が地面に設置した時に痛みなどの症状を緩和するクッションの作用、安定性を保つバランスの作用があります。
このうち、坐骨神経痛対策として特に重要なのがクッション作用で、実際に装着して痛みが軽減されている感覚がなければ、その中敷きを使う意味がありません。
実際に足の痛みが減り、機能が改善されているかどうか、痛みと向き合って判断することが大切です。
インソールだけで改善できる問題ではないことを覚悟しよう
他のテーマでもお話していることですが、中敷きによって坐骨神経痛が劇的に改善するケースはまれです。
グッズと呼ばれるものは、症状の緩和には役立つものの、根本的解決に向けたアプローチをとる性質のものではありません。
そもそも、痛みがどこから生まれているのか、それを把握するところからのスタートです。
中敷きは万能ではないことを理解して、早めの対策を検討しましょう。
おわりに
人間は、即効性のあるものに惹かれます。
痛みがあれば痛み止めを、風邪をひいたら風邪薬を、あざができたらシップを、といったように、とにかく何とかしてすぐに症状を改善しようと試みます。
残念ながら、人間の身体はじっくり時間をかけて症状を改善していくようにできています。
また、できるだけ症状が深刻にならないよう、元気な部分が何とかしてバランスをとろうとする、涙ぐましい努力も行ってくれています。
だからこそ、本当の意味で身体を大切にすることは、道具に頼ることではないと当院では伝え続けています。
部分的に中敷きに頼るのは構いませんが、できれば自分の身体を頼れるまでに信頼してあげたいものですね。