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デスクワークをしていると、肩こりや腰痛に悩まされるという話をよく聞きます。
それはもちろん、長時間一定の姿勢を取っていることにも原因はありますが、つまるところ「骨盤」に何らかの形で負担をかけているからです。
言い換えれば、骨盤に極力負担をかけない座り方を意識すれば、結果的にデスクワークによる体調不良を未然に防げるとも言えます。
そこで今回は、デスクワークが骨盤に悪いと言われている理由と、デスクワーク中に骨盤を正しい位置に維持できるよう姿勢を制御するための方法についてご紹介します。
デスクワークが骨盤に悪いとされる理由とは
デスクワーク中の正しい姿勢を説明する前に、まずはデスクワークが骨盤に悪いと考えられる理由について説明していきましょう。
同じ姿勢を取り続ける
デスクワークの場合、多くは一日の大半を座って過ごすことになります。
お昼休みに自分の席で弁当を食べるような職場だったら、始業から終業まで自席から離れないというケースは珍しくありません。
人間が同じ姿勢をとり続けているとき、筋肉にも常に緊張している部位と緩んでいる部位が生まれます。
そして、緊張してしまった筋肉の圧迫により、骨盤が歪んでしまうのです。
背骨というものはS字カーブを描くようにして、しなやかに身体を支えています。
しかし、座位を長時間・長期間続けることで、次第に広範囲の筋肉が緊張し続け、結果的に本来のスタイルを失ってしまうのです。
筋肉が弱くなる
筋肉の緊張している部位があるならば、反対に緩んでいる部位もあります。
それが「腹筋」です。
腹筋と聞くとシックスパッドの見た目を作るための筋肉を想像しがちですが、人間の想像以上に働き者の筋肉です。
人間が寝起きする動作を助けてくれたり、体幹周りの筋肉を固定したり、深い呼吸をサポートしてくれます。
そして何より、骨盤の傾きをコントロールする働きもこなしているのです。
骨盤を支える腹筋が弱くなってしまうと、それをカバーするために背中の筋肉が働きます。
これは背中の筋肉が持つ本来の動きではありませんから、緊張を起こして硬くなってしまいます。
背中の筋肉が骨盤を引っ張ることで体勢を維持する形になることから、次第に体が歪んでいくというわけです。
普段の生活習慣と掛け合わさって姿勢が悪くなる
骨盤がゆがむ理由は、デスクワークのほか普段の生活習慣に影響を受けるケースもあります。
デスクワークが主に前後の影響なら、生活習慣は主に左右の影響を考えることになるかもしれません。
あくまでも一例ですが、以下のような生活習慣が身に付いている方は、骨盤のゆがみを疑った方がよいでしょう。
・足をいつも同じように、同じ方向に組んでいる
・ショルダーバッグなどのベルトをかける肩が毎日同じ
・立っている時、いつも片側の足に体重をかけている
・座る際は背もたれにもたれかかっている
・普段歩く習慣がない
・長時間立っていると疲れやすい
・ハイヒールを履くことが多い
・いつも決まった姿勢を取りがち
・身体を伸ばす(ストレッチ)習慣がない
・「ながらスマホ」が多い
これらの習慣は知らず知らずのうちに身に付いていることが多いので、特に意識して行動しなければ、なかなか改善するのは難しいです。
一つでも当てはまったら、極力逆の姿勢を取ったり、身体を動かす習慣を身に付けたりするよう意識することが大切です。
身体が左右どちらかに傾いていると思う方は、トートバッグ・ショルダーバッグをプライべートで使うのは止めて、リュックサックに切り替えてみるのも良い方法です。
姿勢を制御するための方法あれこれ
デスクワークが骨盤に悪いと考えられる理由についてご紹介したところで、ここからは姿勢を正しい状態に制御するための方法を、いくつかご紹介します。
思いのほか、自分でできる方法が多いことに驚くはずです。
クッションやサポーターを使って姿勢を維持する
デスクワーク時に使用するグッズを想定した場合でメインになるのは、座面や腰をサポートしてくれるクッションや、一定の姿勢を固定するサポーターなどです。
クッション系は、数多くの商品が通販サイトなどでも紹介されていて、中にはランキング形式で商品紹介・口コミなどが載っているサイトもあります。
種類が豊富なので、自分が気にしている症状の改善につながりそうなクッションを選びたいところです。
人気があるのは「骨盤をしっかり包み込む」タイプのクッションで、OLに人気があります。
商品によって素材はさまざまですが、低反発のクッションを選ぶと腰やお尻が固くなってしまうという人もいるようなので、自分が座っていて無理のないデザイン・素材のものを選びたいところです。
サポーターは、症状が改善したという声もある一方で、根本治療という意味では疑問符がつくところもあります。
あくまでもサポーターによって体が支えられているに過ぎないため、腰痛などの症状が出ていてしっかり改善したいという方は、専門家の意見をあおいでみましょう。
ストレッチをして心身をほぐす
椅子に座りながらできるストレッチには数多くの種類があり、人それぞれの症状に応じてどんなストレッチが必要かを選ぶことになります。
一口に骨盤のゆがみと言っても、骨盤自体が体幹を支える部位の一つであることから、そのゆがみがどのように身体を変えるのかは人によって違います。
足がつらいなら足を、胸がつらいなら胸をというように、ほぐしたい筋肉や部位が異なるわけですね。
気になる部位があるのなら、その部位を無理のないように伸ばしてあげることが、筋肉の緊張を取るストレッチの基本になります。
また、デスクワーク中は精神的な緊張から身体がこわばることもあります。
そのような場合に誰でも簡単に心身をほぐせるのは、深呼吸です。
深呼吸といってもストレッチとして行うので、ただ息を吸ったり吐いたりするのではなく、全身の動きに気を配ることで、身体が緩まっているのを実感するはずです。
以下に、基本的なやり方をご紹介します。
①椅子に座った状態で、両手を肋骨に添えましょう。 ②息を吸います。 ③一瞬息を止め、それから息を大きく吐きます。 |
呼吸に意識を置くことで、心と体の緊張を緩和できますから、時間があるときに試してみてくださいね。
正しい姿勢を意識して椅子に座る
身体をほぐす目的が筋肉の緊張を緩和することなら、正しい姿勢は筋肉に本来かけるべき負荷をかけるための手段になります。
イメージとしては、背骨・身体をまっすぐに保って座ることを意識しましょう。
ひじやひざなど、曲がる部位は90度に保ちながらデスクワークができるように姿勢を整えつつ、椅子に深く座って極力背もたれと背中との間に生まれた空間を減らしてください。
ちなみに、スタイルアップを目的とするなら、逆に背もたれを使わずに座るという方法もあります。
しかし、デスクワーク中はただでさえ長時間座るうえに、かえって疲労感が増すケースもありますから、仕事のパフォーマンスを落とさないためには極力椅子に頼った方がよいでしょう。
骨盤を支える筋肉の筋トレをする
あまり気にする人は多くありませんが、日本人の筋肉は欧米人と構造が違います。
そのため、筋トレをする場合でも欧米人と同じやり方では、骨盤のゆがみを防ぐには不十分です。
日本人が鍛えるべきは「内転筋」で、簡単にまとめると「太ももの内側の筋肉」になります。
この部分を強化することで、骨盤のゆがみを防ぐことにつながり、腰・ひざなどの痛みを抑制する効果が期待できます。
筋肉を鍛える方法ですが、ジムで言えばいわゆる「アダクションマシン」を使う要領で、ひざを離したりくっつけたりする動きを繰り返します。
回数は10回×3セットが目安になります。
休憩中にデスクで行うのが難しければ、トイレなどで行うのもよいでしょう。
健寿の森で推奨する「骨盤をダメにしない床への座り方」
ここまでは、主にデスクワークを主体とした骨盤のケア方法になります。
しかし、健寿の森ではより日常的な部分を想定した「骨盤をダメにしない床への座り方」をアドバイスしています。
床への座り方を意識すると、骨盤のずれを防ぎやすい
年配の方に多いと思われがちな「床に座る」習慣ですが、ともすれば若い世代であっても落ち着くためにマンガ喫茶の座敷席などを選びがちです。
骨盤のずれ・ゆがみを改善するためには、仕事中だけでなく、無意識に姿勢を崩しがちなプライベートでの姿勢にも気を配った方がベターです。
日本人独特の「床に座る」習慣は、実は骨盤に悪い
茶道での所作など、日本人の姿勢の正しさは、ときどき世界の話の種にさえなっていた時代がありました。
それは、昔の人は「きちんと座った方が身体にかかる負担が少ない」ことを知っていたからなのかもしれません。
ところがふたを開けてみると、きちんと所作をマスターしている人はまだしも、一般人の床座りは、椅子に座るのに比べると首・腰・肩などに負担をかけやすい姿勢になっていることが多いのです。
そのため、せっかくオフィスで正しい座り方を実践しても、プライベートで身体がぐちゃぐちゃになってしまったら、結局またやり直しということもあり得ます。
例えばあぐらなどは床に座る際はとても楽な姿勢ですが、骨盤のケアという点では猫背などを助長してしまうため、あまりおすすめできないのです。
基本は正座と踵座(かかとずわり)
床への座り方という意味で考えた場合、骨盤をケアする基本姿勢は「正座」もしくは「踵座(かかとずわり)」です。
正座はイメージできると思いますが、踵座は分からないという方もいるかもしれませんね。
踵座の姿勢を簡単に説明すると、正座の状態からつま先を立て、両足の踵を天井に向けた(上にした)状態の座り方を指します。
この姿勢を維持することで、仙骨(しっぽの骨)を抑えることなく、背骨のしなやかさを保ったまま床に座れるのです。
正座の場合は、長時間座っていると今度はひざに来る可能性もありますから、時々足をくずしながら(休みながら)正座をするようにしましょう。
また、どうしてもあぐらをかきたいときは、臀部に10cmほどのクッションを置き、お尻が床につかないように座ってください。
おわりに
以上、デスクワークならびにプライベートにおける、骨盤の制御・ケア方法についてご紹介してきました。
基本的には難易度の低い方法に絞ってご紹介していますが、自分で意識するようにしても、身体の傾きや骨盤のゆがみというものは分かりにくいものです。
もし、デスクワーク中に筋肉などの不調を感じ、自分でケアしても改善されないようであれば、ぜひ一度ご相談ください。