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整体院に足を運ぶ方の多くは、何らかの具体的な症状を持っています。
中には、インターネットで調べた結果、脊柱管狭窄症・坐骨神経痛なのではないかと、あらかじめ答えを持ってきてくれる方もいるようです。
しかし、専門家の目線では、そもそも脊柱管狭窄症と坐骨神経痛は、似たように見えて全く違うものです。
今回は、上記2つの違いやその理由についてお伝えします。
「坐骨神経痛という病気はない」ことを、多くの方は知らない
脊柱管狭窄症と坐骨神経痛とを並べたとき、坐骨神経痛という症状が出ている原因の一つとして、脊柱管狭窄症がカウントされるわけですが、多くの方が坐骨神経痛という「病気」があるものと理解しています。
しかし、これは間違った解釈になります。
それでは、坐骨神経痛とはいったい何なのでしょうか。
坐骨神経痛とは「症状」の一つである
坐骨神経痛とは、何らかの病名がつく具体的な原因が見られる際に認められる「症状」です。
よって、坐骨神経痛自体が病名というわけではありません。
ざっくりと言えば、具体的な病名を見つけるための、とっかかりの一つになります。
坐骨神経痛として認められる症状としては、主に以下のようなものが考えられます。
- 座っているときに痛みを感じる
- 少し歩くと足や腰に痛み、しびれを感じる
- 運動の有無に関係なく、お尻やふくらはぎに痛みを感じることもある
- 長時間立っていたり、長い距離を歩いたりすることで痛みが生じる(間欠性跛行)
症状を認めた場合、できるだけ早く専門家に診てもらった方がよいでしょう。
坐骨神経痛の原因として考えられる病状は
次に、坐骨神経痛の原因となる病状についてお伝えします。
足や腰に痛みを感じるのであれば、多くの場合関節や筋肉の症状を疑います。
ただし、基本的には体内において何らかのトラブルが起こることにより痛みが発生しますから、必ずしも関節や筋肉に問題がある場合だけではありません。
主な症状としては以下の通りです。
- 脊椎の疾患
(腰部椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、腰椎すべり症、変形側弯症など) - 梨状筋症候群
(骨盤内の梨状筋という筋肉が、坐骨神経を何らかの形で圧迫することにより痛みが生じる) - 血管性病変
(閉塞性動脈硬化症、閉塞性血栓血管炎) - 腫瘍性病変
(骨盤内や骨盤の腫瘍)
このほか、足に加えて手のしびれもあるようであれば、念のため脳に問題がないかどうかもチェックした方が賢明です。
特に、朝起きたら急に手足がしびれているような状況であれば要注意です。
緊急を要する場合があります。
医療機関で行われる検査や改善へのアプローチ
整形外科を受診した場合、患者さんはまず検査やテストを受けることで、症状を特定していきます。
基本となるのは画像による確認で、レントゲン・CT・MRIなどの画像検査を受けることになります。
この段階で病状が特定できることもありますが、その他にテストを行うこともあります。
テストといっても筆記による症状特定ではなく、実際に足を組んだり動かしたりして、どのタイミングで痛みが発生するのかを特定するというものです。
テストの結果、陽性と判断されればそこで病状が分かります。
ここまでお伝えしてきた通り、坐骨神経痛は症状の一つであるため、一口に一律で改善に向けたプランを立てるのは難しいところがあります。
ただし、軽度のものであれば保存療法や運動療法によって改善する可能性は十分あります。
しかし、残念ながら効果がなく、どんどん痛みなどの症状がひどくなっていったら、手術を検討する必要があるでしょう。
脊柱管狭窄症の場合、もっとも分かりやすい特徴が「間欠性跛行(かんけつせいはこう)」
脊柱管狭窄症におけるもっとも分かりやすい特徴としては、歩行と休憩を繰り替えす「間欠性跛行」です。
安静にしている時は強い痛みを感じることは少ないのですが、背筋を伸ばして立ったり歩いたりすると、太ももや膝から下にかけてしびれ・痛みを感じます。
その結果、思ったように歩くことができなくなってしまうのです。
前かがみや腰掛ける動作によって、しびれや痛みが軽減されることもあります。
主な原因と症状のパターンについて
脊柱管狭窄症は、主に腰部に症状を認めるものが多いため、ここでは腰部脊柱管狭窄症についてお伝えします。
もともと、腰部脊柱管狭窄症は、加齢や労働・背骨の病気などが遠因となります。
直接的な原因としては、どの神経にダメージがあるのかによって変わってきますが、概ね以下の3パターンが該当します。
▲痛みは少ないが重度になりうる馬尾型
腰の部分にある脊柱管という部位には、その中央にたくさんの神経が通っています。
これを馬尾神経と呼びますが、その神経が圧迫されることが原因になる場合を指します。
強い痛みはないのですが、両足全体がしびれて脱力感があるというのが特徴です。
この症状が重症化すると、頻尿・残尿感・便秘などの排泄障害につながることもありますから、注意が必要になります。
両側の下肢しびれが主な症状になり、年齢を重ねることで悪化する傾向があるものとされ、異常知覚や下肢の脱力感にもつながることから、長患いを避けるためにも早期治療が望ましいでしょう。
▲痛みは強いが手術せずに完治も見込める神経根型
馬尾型が神経の根本に問題があるのに対し、神経根型は馬尾神経から左右に出ている神経根の圧迫によって起こります。
坐骨神経痛の症状も強く出るため、腰から足先にかけて激痛が走ることも珍しくありません。
また、馬尾型が両側の下肢に症状が出るのに対し、神経根型は片側に強い痛みとしびれを感じるのが特徴です。
ただ、神経根型の場合は、痛みにどうしても耐えられない場合を除き、手術せず保存療法で数年以内に完治するケースが多いという意見もあります。
いずれにせよ、痛みを認めた段階で相談するのが賢明です。
▲両方が混ざっている混合型
馬尾型と神経根型は、必ずしも単独で起こるものではなく、両方の症状が混ざり合うような形で症状が進行している場合もあります。
そのため、痛みや違和感を感じた場合は、独断せず早めに医療機関での診断が必要になります。
どうすれば症状がやわらぐのか
脊柱管狭窄症の苦しみをやわらげるためには、普段の生活から姿勢を整えることが必要です。
神経が圧迫される場合、重力が関係してくることから、腰をまっすぐに伸ばして立つと負荷が強くなります。
逆に、前かがみになるとやわらぐことから、歩くときに杖をついたり、シルバーカーを押して腰を少しかがめるようにしたりすると、痛みが起こりにくくなります。
運動不足で運動する場合は、エアロバイクなどは腰をかがめて行うため、痛みが起こりにくいという特徴があります。
手術以外の治療方法としては、一般的にどのようなものがあるのか
整形外科などで行われている治療方法として登場するのは、投薬による痛み止めなどが代表的なものでしょう。
他には、腰痛のようにコルセットを使って腰を固定したり、神経ブロック・骨髄神経の血行を良くする薬などを使用して症状改善につなげる例もあるようです。
ただ、病状が改善しない場合は、手術を検討することになります。
健寿の森では、その人が「どう暮らしてきたのか」から原因を考える
ここまでご紹介してきた通り、多くの機関で考える手法としては、痛みなどの症状に対する対症療法が主流です。
どうすれば症状をやわらげられるかや、痛みを止められるのかという点に、意識が向けられていることは否めません。
しかし、健寿の森における「完治」とは、症状が出る前の「いつも通りの生活」ができることですから、そのいつも通りがどのようなものなのか、丁寧に聴き取りを行うことから進めていきます。
原因を紐解くには、患者さんの背景をよく知る必要がある
当院では、まずカウンセリングを綿密に行うことで、患者さんに寄り添いつつも、どうしてそのような症状に悩まされているのかを分析していきます。
その過程で検査も行い、問題点を洗い出していきます。
脊柱管狭窄症という「原因」に辿り着くためには、坐骨神経痛という「症状」について、極力絞り込んでいく必要があります。
具体的に絞ると、神経に原因があるケースが脊柱管狭窄症に該当します。
しかし、それ以外にも痛みが起こる原因はいくつか存在します。
筋肉の炎症が原因となる場合。
骨盤や関節そのものが原因となる場合。
背骨が不安定になっている場合。
成長期の子どもがスポーツに勤しんでいる場合。
このように、坐骨神経痛を広い意味で捉えると、思っている以上に多くの原因が考えられるのです。
元通りに歩けるようになるには、患者さん自身の努力が求められる
晴れて原因が特定されたら、そこからが本番です。
圧迫されている部位の降圧を行いつつ、インナーマッスルにも刺激を与えて血行を促進し、痛みをやわらげていきます。
その段階で、関節の潤滑性を高める施術も行います。
ただ、こうして当院で施術を行っても、また以前と同じような過ごし方をしていると、悪い癖が戻ってしまい症状が再びぶり返すことも珍しくありません。
そこで、患者さん自身が「正しい身体の動かし方」を身に付ける必要が生じます。
背骨全体や脊柱の構造について説明することから始まり、関節は本来どのように動かすべきなのかをお伝えします。
その動きに問題がないと判断した段階で、より正しい働きが強まるように施術を行っていきます。
こうして、自分の力で自分の身体を修復することを、文字通り身体で覚えてもらいます。
自助努力が必要になってくるのは、どのような病気でも同じことではありますが、足や腰は目に見えて日常生活に必要不可欠なパーツですから、真剣に取り組む人とそうでない人との回復差はかなりの違いがあります。
もし、症状に悩んでいる方は、そう遠くない将来に寝たきりにならないよう、これを機に正しく身体を動かすことを覚えるべきです。
おわりに
脊柱管狭窄症と坐骨神経痛は、原因と症状という違いはあれど、点と線でつながっている可能性があります。
問題は、患者さんから見てその線が見えにくいというところでしょう。
自分自身で見えないものでも、他者の目によって明らかになるケースは珍しくありません。
痛みやしびれが発生した段階で、早めに専門家に診てもらうことが大切です。