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日本で終身雇用の概念が薄らいでいる昨今、病気やケガを理由に解雇されるケースは珍しくなくなりました。
一昔前は、採用間もなく結核で入院しても、完治まで面倒を見てくれた会社もあったようですが、今は多くの会社がシビアな決断を下す場面に遭遇しています。
結婚したばかりで幸せの絶頂にあるさなか、パートナーが坐骨神経痛で仕事を退職するという事態に遭遇し、愛が揺らいでしまったという方もいるようです。
若干無責任に感じられるかもしれませんが、それだけ世の中が世知辛くなってしまったということなのかもしれません。
実は、この点について当院でも相談を受けることがあり、一定の回答は用意しています。
そこで今回は趣向を変えて、坐骨神経痛で退職を検討している人向けに、何とかして退職しない方法・新しい仕事を見つけるための考え方についてお伝えします。
坐骨神経痛で退職を考えるケース
最初に、坐骨神経痛で退職を考えるケースについて、いくつか考えてみましょう。
どんな仕事でも身体を使うものですが、やはり特定の姿勢を取ったり、重いものを頻繁に持ち上げたりする状況が、体調の悪化につながるようです。
とにかく痛くて体が動かない
坐骨神経痛の痛みは、いわゆる「疼痛」に該当します。
ずきずきとうずくような痛みが続き、痛みの度合いも強いケースが多いため、仕事に支障をきたしているという一面があります。
また、どんな姿勢を取ってもつらい痛みの場合もあれば、一定の姿勢を保っていれば痛みが発生しない場合もあります。
このあたりの差が、退職を決断するかどうかに程度影響を及ぼしていることから、診断はしっかり行わなければなりません。
仕事で精神的に追い詰められているうちに腰痛が発生
坐骨神経痛は、多くの場合「腰」周辺に痛みを認めます。
臀部やふくらはぎなどに痛みを感じることもありますが、特に腰の痛みについてクローズアップされることが多いようです。
そのため、腰痛=坐骨神経痛のように考えている人も少なくないのですが、この認識は誤りです。
また、腰痛も坐骨神経痛も症状名に過ぎず、病名ではないことに注意が必要です。
仕事内容や本人の性格によっては、ストレスで精神的に追い詰められ、身体がこわばることで腰痛を発症するケースもあります。
精神と肉体は深いところでつながっているため、精神面でのケアが必要な腰痛があることを、ここでは覚えておいてください。
長時間座りっぱなし・立ちっぱなし
オフィスワークでの座りっぱなし、飲食店スタッフやレジ打ちでの立ちっぱなしなど、同じ姿勢を長時間保つ姿勢も坐骨神経痛を招きやすい一面があります。
ヘルニア・脊柱管狭窄症などは、腰を前後することで痛みが引き起こされるため、体勢の維持が困難なケースは多いです。
また、筋肉に問題がある場合、くしゃみなどで体中に痛みが響いてつらいこともあります。
姿勢の維持だけで身体が痛む状態が続くのは、仕事のパフォーマンスにも少なからず影響しますから、退職を検討するのは無理からぬことでしょう。
退職後の不安を感じる人は、退職しない方法を考えてみよう
これだけ退職を検討する理由があるにもかかわらず、坐骨神経痛に悩んでいる多くの方が退職すべきかどうか決められないのは、やはり経済的な理由が関係しているものと思われます。
退職後に、スムーズに他の仕事を見つけられるかどうか、不安を感じるケースは珍しくありません。
何とかよい方法を探そうとして、ネット上で質問サイトなどに相談をぶつけてみる人もいるようですが、残念ながら回答自体が全くの素人の意見なので、読んでみると無責任で腹が立ったという声も聞かれます。
このあたりは、相談する側のモラルや考え方にも関係しているので一概には言えませんが、決定打となる意見の少なさが理由なのかもしれません。
退職に不安を感じる状況であれば、その不安を先に取り払う方法を考えることが大切です。
この悩みの本質は「仕事を辞める」ことではなく、おそらく「坐骨神経痛」を何とかすることですから、視点を変えて対策を考えてみましょう。
まずは症状を改善することが基本方針
最も基本的かつ有効的な考え方は、坐骨神経痛の症状改善です。
痛みの根本的な問題をとらえ、その解決に向けて行動を起こすことが大切です。
ここで重要なのは、その解決策を一人で悶々と考えない、ということです。
坐骨神経痛はあくまでも症状名のため、痛みが引き起こされている原因が特定できないケースが多く、全体の8割以上もあるからです。
そのため、自分で明確に原因を特定するのは非常に難しく、独学で対処しようとしても失敗します。
我慢と対症療法に頼り続けた結果、最終的に手術に至ったケースは珍しくありません。
確かに、投薬で痛みがおさまる場合もあるでしょうし、コルセットを使えば当面の痛みは避けられるでしょう。
マッサージ・ストレッチで、ごく軽微なものであれば快方に向かうケースもあるのかもしれません。
しかし、そもそも専門知識・経験がなければ、今の状況が「本当にもとの状態なのかどうか」を判別すること自体難しいはずです。
専門家の施術・アドバイスを受け、回復を早めることが症状改善・退職を防ぐことにつながるものと押さえておきましょう。
休職という選択肢を踏んでからの退職
いろいろなことに取り組んでも痛みが治らない状況であれば、まずは身体を休めるという選択肢を選んだ方が、経済的なリスクは少ないかもしれません。
精神的負担が大きいことを自覚しているなら、環境の変化が痛みに関係している可能性を疑ってみたいところです。
休職後は、回復後に行う仕事内容につき、できるだけ軽いところから始めてみましょう。
しかし、結局同じ症状をぶり返すようなら、その職場を離れるという選択肢が有効かもしれません。
休職中の期間は、単に痛みを抑える方法を選ぶだけでなく、どこに痛みの原因があるのかを知ることが大切です。
ベッドで寝たり、整形外科でお薬をもらったりするだけに終始せず、その根本的な原因を突き止めるための努力が求められます。
作業内容の異なる部署への異動・身体的負担が少ない職場への転職
休職した後、今後仕事を続けていくうちに痛みが再発するかもしれないと怖さを抱えている場合、経済的に余裕があるなら退職という方法もあるでしょう。
しかし、退職というのは究極の選択のため、作業内容の異なる部署への異動・身体的負担が少ない職場での転職という段階を踏んでみましょう。
そもそも、どういった職種を選ぶと自分にとって負担が少ないかは、どのような姿勢をとった時に痛みを感じるかによって変わってきますから、個人差がある話です。
例えば、オフィスワークで坐骨神経痛を患ったから、現場仕事をしていた方がよいのかと言えばそうではありません。
倉庫内でフォークリフトを運転しつつ、作業としての事務を行う分には問題ないという人もいるかもしれませんし、重い荷物を運ばないタクシードライバーならできるという人もいるでしょう。
座るという行為が、自分の場合どのように痛みを発生させているのかが分かれば、異動先を選ぶのに役立つはずです。
坐骨神経痛は、原因を特定しにくい分だけ対応が難しいのかもしれない
椎間板ヘルニア・脊柱管狭窄症と診断された場合、比較的炎症反応の部位を特定しやすい傾向があります。
しかし、坐骨神経痛を発生させている状況は見た目に分かりにくく、原因を特定しにくいため、専門家にとっても対応が難しい一面は否定できません。
ただ、その人がどのような生き方・暮らし方をしてきたのか、丹念に話を聞いていくと、思わぬところにヒントがあったりします。
実際に施術を受ける場合、きちんとヒアリングを行ってくれる人を選びたいところです。
一口には語れない坐骨神経痛
坐骨神経痛が発生する状況は、実に様々です。
「坐骨神経に対して何らかのダメージが加わっている」ことで痛みが発生するのは認めるところなのですが、問題は症状のバリエーションです。
前屈したら痛みが生まれるのは椎間板ヘルニアに多い傾向があります。
逆に、後ろに反ると痛みが生まれ、前かがみになると痛みがおさまるのは脊柱管狭窄症によく見られる傾向です。
慢性的にぎっくり腰を起こしてきた人・座ってから立ち上がると痛みを生じる人は、大腰筋性坐骨神経痛かもしれません。
スポーツを行っていて、臀部からふくらはぎにかけて痛みが発生し、寝るときの体勢によって痛みが強まるのであれば、梨状筋性坐骨神経痛が疑われます。
こういったバリエーションを、どれだけの確率で知識のない方が見極めることができるでしょうか。
正直、一人での見極めは厳しいと思います。
原因を特定し、施術を行う
当院を例にとった場合、まずはどの部位に原因があるのかをカウンセリングで理解し、圧迫されている部位を除圧していきます。
炎症がすでに起こっている状態であれば、アイシングを提案することもあります。
インナーマッスルの血流を改善した方がよい場合は、鍼を使って痛みを早期に和らげるようにします。
また、正常歩行に必要な仙腸関節の潤滑性を高める施術も行います。
こうした施術の積み重ねによって、身体が正しく動くためのお膳立てを行っていくのです。
正しい知識を知ることが大切である
当院では、施術を行って終わり、といった形をとりません。
普段の生活を改善しない限り、症状はぶり返すからです。
お客様に、背骨全体がどのような構造になっていて、関節は本来どう動くのが正しいのかを知ってもらってから、正しい動作を「再教育」していきます。
つまり、お客様自身が正しい知識を得ることが、何よりも大事だというスタンスです。
介護職の方など、身体を動かすことが資本の方には、身のこなし方についてアドバイスさせていただくこともあります。
立ち方・座り方を学ぶことで、次第に普段の業務が安全になっていくはずです。
おわりに
痛みや病気を理由に退職する方は、一昔前よりも多くなってきているものと思います。
それは、会社が疑似家族ではなくなったことが一因にあるのかもしれません。
非正規社員が増えていること・専門職は残業の対象外となることなど、労働者を取り巻く環境は日々悪化しています。
それでもこの社会を生き抜くためには、何はともあれ身体が資本です。
健康は、一度失うと取り戻すのに時間を要します。
本格的につらくなり、退職を検討する前に、こまめにお越しいただければと思う次第です。